池上の魅力

日常の延長上で体験! “着物” “植物”の世界に触れて心ときめく1日を過ごす

文化の薫りを醸す池上には、何気ない日常を特別なものにしてくれる場所がそこここに。
やわらかな陽光があふれる季節。
おしゃれ心や感性を刺激してくれる2つのお店で素敵な時間を過ごしてみては?

「ケの日」を特別なものにするお手伝い「着物とコーヒー ふうりん」 植物を通して空間づくりのご提案「Flower Shop wnico」

植物を通して空間づくりのご提案「Flower Shop wnico」

池上駅から歩くこと約5分、突如として目の前に現れる、ヨーロッパの街角を思わせるたたずまいのこの建物は、吉澤健介さん、広美さん夫妻が営む「Flower Shop wnico(ニコ)」(以下、wnico)。外壁をキャンバスに、ダイナミックに彩られる植物たちのグリーンが、店独自の世界観を一層盛り上げ、思わず中をのぞいてみたくなるような存在感を放っています。

wnico(ニコ)という店名は、健介さんが中学生時代に始めたパンクロックのバンド名から。道行く人が足を止めてしばし見惚れる姿がちらほら。

wnicoは、ちょっと変わった観葉植物や多肉植物なども多く取り扱う人気の花屋。驚かされるのは店内も含め、所狭しと並ぶ葉もの類の数々。それでも雑然とした印象にならないのは、色合いや質感、形状の異なる葉ものの組み合わせの妙により、互いの個性を引き立て合わせているから。そうした葉ものの魅力を知り尽くす健介さんは、聞けば、「葉っぱ屋さんをやりたかったんです」とか。「お金になるのは切り花なんですが(笑)、やっぱり好きなのは葉っぱなんですよね」

店先にはさまざまな植物が並び、モルタル造形でエイジング加工を施した外壁を一層際立たせている。エバーフレッシュやフウチソウ、オリーブなどがそれぞれ魅力を引き立て合い見応えのある空間に。

枝垂れるタイプの植物やつる性の植物を天井から吊るしたり、ワインボックスを花台や額縁に見立てたりと、高低差を生かしたディスプレーによって立体的なコーナー作りを展開。家庭でも取り入れてみたいアイデアが満載です。

店主二人の気さくなお人柄と、類まれなるセンスに惚れ込むファンは多く、ともすると、お店に入ることさえ躊躇してしまう男性が多いとされる花屋業界の中でも、wnicoでは「お客さんの割合でいうと男性がほぼ半分を占める」という、ちょっと異色の存在。

窓枠を囲むようにグリーンを配し、印象的なシーンを演出。
ひな壇状に段差をつけたディスプレー。カゴやブリキのバケツを鉢カバーにすることでリズミカルな印象に。木枠を額に見立てて高い位置から吊り下げた斑入りのつる性植物がアクセントをプラス。流木に複数のエアプランツを這わせるのも取り入れたいアイデア。

「僕たちの仕事は、植物を売るというよりも、『こうしたら、おうちがかっこよくなるんじゃない?』と、空間づくりの提案をさせていただくことなのかな、と思っています。特にコロナ禍で、おうちに植物を飾りたい、ちょっと素敵にしたいと思う人が増えたんですよね。

例えば、部屋に観葉植物を取り入れたいというお客さんには、棚の上に平坦に並べて飾るより、目線より高い位置、中央、低い位置にタイプの異なる植物を飾ると効果的ですよ、とお伝えしています。その3個があれば、横並びに10個飾るよりも印象が断然変わりますから。

現代の住宅は、照明を好きな位置に取りつけられるダクトレールが最初から備わっているケースも多いので、そこを利用して植物を吊り下げてみませんかと、おすすめしやすくなりました。ライトと組み合わせることで、壁や天井に葉っぱの影が映り込み、雰囲気を盛り上げてくれる。そうしたトータルな空間づくりを提案していますね」

器との相性や、差し色の使い方、雑貨との合わせ方も参考になるディスプレー。

お二人が、池上で花屋を始めてから今年で11年目に突入。花屋の魅力について伺うと、「カレンダーどおりに生活を送れるのがすごく心地いいんです」と健介さん。とはいえ、昨年からの新型コロナ感染拡大によって状況は一変。卒業式や送別会、謝恩会など、花の需要が増す3月に業界全体が直撃を受けました。

「今年で言えば、長女が参加するはずの成人式も中止になり、毎年、成人式の式典の壇上に飾る花を担当させていただいていましたが、それも当然キャンセル。そうして『これがなくなっちゃった』『あれもなくなっちゃった』と挙げ出したら悲惨ですけれど。──でもね、やっぱりみなさん、おうちで過ごす時間が長くなって、『Zoom会議で部屋が映るからお花がほしい』という方や、気分転換に家族連れで来てくださる方がとても増えたんですよ。

これは、以前では考えられなかったこと。切り花にしても、以前はギャラリーのエントランスや仏具屋さんといった業者さんに納めることが多く、お店を構えていても外に出ている時間が長かったから。

『まちのお花屋さん』として、今はどこに置いたらお客さんからよく見えるか、どうやってお店をかわいくしようかと思うんです。考えてみれば、もともとやりたかったのはこれだから、僕は今の形態を気に入っているんですよ」

切り花では、カーネーションやダリアなどの定番人気の花以外にも、葉ものやオーストラリア産の花など、ちょっと変わったものを仕入れているのがwnico流。過酷な環境でも耐えられるオーストラリアの植物は、個性的でインパクト大。「そのうえ長持ちするし、きれいなドライができるのも魅力ですよ」(健介さん)。ブーケやフラワーアレンジ、リースなど、おまかせでオーダーするお客さんも多いとか。
「僕は葉っぱ屋さんなので(笑)、ブーケなら、いろいろな色のお花を混ぜるよりも数種類の葉っぱを使って深みを出し、そこにお花を1種類入れるぐらいが好きなタイプですね」

誕生日や記念日などに贈るフラワーアレンジメントにも定評があるwnico。取材当日の3月8日は「ミモザの日(国際女性デー)」。ミモザを中心に、バラやシンビジュームなど同系色のグラデーションでまとめたやさしいイメージのフラワーアレンジメントを作っていただいた。

現在の場所には、2年前に移転しリニューアルオープン。以前は、信号1つ池上駅寄りの場所にお店を構えていました。築約75年という建物は、大家さんの了解を得てオールリフォーム。施工は、モルタル造形を得意とする近所の工務店「トミ企画」に依頼しました。トミ企画さんとは、「sen」というチームを組んで店舗の施工などを行う仕事仲間でもあります。
「ただ、ここまで大がかりの作業を一緒にするのは初めてでした(笑)。大変でしたが、自分たちの新たな場所が出来上がる過程を、一緒に作業しながら見られるのは楽しい時間でしたね」

そもそも、この物件を知ったのは、思いがけない出会いがきっけだったという健介さん。 「以前、ここに男の子が友人とシェアして住んでいたんですよ。それを知らなかったものだから、ある日、この前を通りかかったら、たまたま1階のシャッターが開いていて、DJブースとレコードや楽器が並んでいるのが見えたんです。思わず入っていったら、『あ、すみません。ここ僕の家なんで』と(笑)。そこから仲良くなって遊びに行くようになったんですが、数年後に彼が結婚することになりここを引き払うと聞いて、もう即決でしたね」

お店のシンボルだというコウモリランは池上育ちの推定40歳。「花壇の世話をさせていただいていたご近所のおばあちゃんから、店を移転する記念に譲り受けました」

さて、18歳から約20年間、大田市場の花き部で仲卸をしていたという健介さん、そして、長女が生まれる27歳まで美容師として働いていたという広美さんは、ともに今年で48歳。高校1年生のときからつきあっている(!)というお二人だからこそのコンビネーションのよさはこのお店最大の魅力です。
「けれど、じつはここに至るまでにはいろんなドラマがあったんですよ」と広美さん。「彼は1999年に、山王でwnicoをオープンさせているんです。仲卸をやりながら花屋をやって5年でつぶしました(笑)。好きなものを扱ってとても素敵でしたけれど『売れなくてもいい』どころか、『売れちゃったらいやだ』という世界で(笑)」

最大の転機を迎えたのは34歳のとき。健介さんが難病に指定されるベーチェット病に冒されていることが発覚します。「そのころ急性心筋梗塞を発症したり、なんでこんなに体がおかしくなるんだろうと思ってはいたんですけれど、すべてこの病からくるものだとわかったんです」(健介さん)。

一時は、危篤状態に陥るまで病状が深刻化したのだとか。広美さん曰く、「管につながれて水も飲めない状態で4か月。容体が急変して『2時間後はどうなるかわかりません』と言われたことが2、3回はありましたね。当時、0歳児と7歳児の娘の子育てもあったので、そのころの記憶があまりないんですよ」

幸い、健介さんは回復に向かい職場への復帰を果たしますが、そこで告げられたのは別部署への異動。異動先は、劇場が入るビルの中での花屋の業務でした。

「上司と見に行ったんですが、こんなビルの中でやるのは無理だと思って。そこからモノレールで帰ってきたんですけれど、当時はホームと車両の間がけっこう空いていたんですね、ぼーっとして落っこったんですよ(笑)」
「血だらけになって帰ってきて驚きましたね」と広美さん。「難病を抱えて長期間仕事を休み、家には幼い子どもが2人いる。そんな状況だったので、本人は命じられた仕事を絶対しなければいけない、と思い込んでいたようです。その様子を見て、思わず私、『え、じゃあ自分で好きなことをやればいいんじゃない?』と言っちゃったんですよ、何も考えずに。そう言っちゃったものだから、次の日には池上で物件を見つけてきました(笑)」

花屋として時計の針を再び刻み始めたwnico。今度は、広美さんと二人揃っての門出です。聞けば、店舗に池上を選んだ理由は、子どもの通う幼稚園や小学校が近かったこと、そして、二人が尊敬してやまないお店が近隣にあることも大きかったといいます。

「子ども食堂も行う蓮沼駅の『気まぐれ八百屋だんだん』(大田区東矢口)、千鳥町駅にあり、お茶も飲める絵本の店『ティール・グリーン in シード・ヴィレッジ』(大田区千鳥)、無農薬野菜を販売する『自然農場まほろば』(大田区大森北)は、姿勢が一貫している憧れのお店です。あんなふうになれるとは思いませんが、『ここに来ると安心する』と言っていただけるような場所にしていきたいと強く思った。それは今でも変わりません」

オープン当時と比べて何よりうれしいのは、ここ数年、池上では本ブログ記事でも紹介した「古民家カフェ 蓮月」や、「SANDO BY WEMON PROJECTS」をはじめとする新しい店舗が続々と増えて、地域の中での交流が盛んになったこと。
「本当に魅力的な人が多いんです。そうした魅力的なお店があることで、そこを訪れるお客さんが増えて人通りが変わり、まちの風景が少しずつ力強いものに変わってきたと感じます。みなさんもぜひ、池上に気軽に遊びに来てください」

Flower Shop wnico(ニコ)
住所:大田区池上3-30-9
電話:03-3753-8395
営業時間:10:30〜18:00
定休日:木曜日
(Instagram)
https://www.instagram.com/_wnico/?hl=ja
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